「介護職員等処遇改善加算」とは
急速な高齢化社会の進展に伴い、介護業界では人材不足が深刻化しています。この人材不足の最大の要因の一つが、業務負荷に対して低い賃金水準であることが指摘されています。この課題を解決するため、国は介護報酬において介護職員の賃金改善に取り組んできました。2024年度の改定では、「介護職員処遇改善加算」「介護職員等特定処遇改善加算」「介護職員等ベースアップ等支援加算」といった複数の加算制度を一本化し、「介護職員等処遇改善加算」という新たな制度が導入されました。これにより、介護職員等の労働環境や給与面において、より良い待遇が提供されることが期待されています。介護職員等処遇改善加算は、介護職員等の働きやすさと尊厳を守りながら、高品質な介護サービスの提供を支援するための重要な取り組みとなっています。
介護職員等処遇改善加算の算定要件
キャリアパス要件Ⅰ(任用要件・賃金体系の整備等)
- 介護職員の任用における職位、職責又は職務内容等の要件を定め、賃金体系の整備を行い、就業規程、賃金規定にて周知している。
キャリアパス要件Ⅱ(研修の実施等)
- 介護職員等の資質向上のための知識教養を高めるための書籍購入や研修費に資することを目的として必要な実費の一部を研修奨励金として支給する。
- 前向きに資格取得を目指す職員に対し、研修に必要な費用の一部支援を資格取得支援金として支給する。
キャリアパス要件Ⅲ(昇給の仕組みの整備等)
- 介護職員について、経験もしくは資格等に応じて昇給する仕組みを設けている。
キャリアパス要件Ⅳ(改善後の賃金要件)
- 月額平均8万円の処遇改善又は改善後の賃金が年額440万円以上となる者」を設定する必要があるが、当事業所は小規模事業所で加算額全体が少額であるため免除される。
キャリアパス要件Ⅴ(介護職員等の配置要件)
- 介護職員のうち介護福祉士の割合が70%を超えている。
職場環境要件の掲示について
見える化要件に基づき、介護職員等特定処遇改善加算の取得状況を報告し、賃金以外の処遇改善に関する具体的な取り組み内容を下記の表に掲示いたします。
職場環境要件について
下記の表における6つの区分について、全ての区分で1項目以上の取り組みを計画期間中に行うこと。そして、実施する以下の項目の処遇改善(賃金改善を除く。)の内容を全ての介護職員に周知することとされています。
職場環境等要件 の区分 | 内容 | 当事業所の取組 |
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入職促進に向けた取組 | ①法人や事業所の経営理念やケア方針・人材育成方針、その実現のための施策・仕組みなどの明確化 ②事業者の共同による採用・人事ローテーション・研修のための制度構築 ③他産業からの転職者、主婦層、中高年齢者等、経験者・有資格者等にこだわらない幅広い採用の仕組みの構築(採用の実績でも可) ④職業体験の受入れや地域行事への参加や主催等による職業魅力度向上の取組の実施 | 1. 目的 当事業所では、介護業界未経験者や異業種からの転職者、主婦層、中高年齢者など、経験や資格の有無にかかわらず幅広い層の人材を採用し、職場環境の充実を図ることで、安定した人員確保とサービスの質の向上を目指します。 2. 採用方針 - 未経験者歓迎:介護職未経験者でも安心して働けるよう、研修制度を整備します。 - 異業種からの転職支援:他産業での経験を活かせるよう、業務適応支援を行います。 - 主婦・中高年齢者の採用促進:短時間勤務やシフト調整を柔軟に行い、多様な働き方を可能にします。 - 資格取得支援:働きながら資格を取得できる制度を整え、キャリアアップを支援します。 3. 採用活動の具体策 1. 多様な求人媒体の活用 - ハローワーク、求人サイト、自社ホームページ、SNSなどを活用し、幅広い層に情報を発信 2. 職場見学・説明会の実施 - 未経験者向けに、気軽に職場の雰囲気を知る機会を提供する体制 - 現場スタッフとの交流を通じた不安解消 3. 柔軟な勤務体系の整備 - 短時間勤務、シフト制、Wワーク可など、多様な働き方を許容 - 週1回からの勤務や時短勤務を可能にし、主婦層やシニア層が働きやすい環境を構築 4. 研修・育成制度の整備 - 新入職員向けの基礎研修を実施し、介護未経験者でも安心して業務に従事できる環境を提供 - メンター制度を導入し、入職後の定着を支援 メンター制度 とは、新入職員や未経験者がスムーズに職場に適応できるように、経験豊富な職員が相談役(メンター)となって指導・サポートを行う制度です。 メンター制度の目的
具体的な取り組み
この制度を導入することで、特に未経験者や異業種からの転職者の定着率を高め、職場全体のチームワーク向上につながります。 4. 期待される効果 - 多様な人材の確保による安定した人員体制の構築 - 未経験者の定着率向上と、将来的な資格取得による職員のスキル向上 |
資質の向上やキャリアアップに向けた支援 | ⑤働きながら介護福祉士取得を目指す者に対する実務者研修受講支援や、より専門性の高い介護技術を取得しようとする者に対するユニットリーダー研修、ファーストステップ研修、喀痰吸引、認知症ケア、サービス提供責任者研修、中堅職員に対するマネジメント研修の受講支援等 ⑥研修の受講やキャリア段位制度と人事考課との連動 ⑦エルダー・メンター(仕事やメンタル面のサポート等をする担当者)制度等導入 ⑧上位者・担当者等によるキャリア面談など、キャリアアップ・働き方等に関する定期的な相談の機会の確保 | 1. 目的 当事業所では、新入職員や未経験者が円滑に職場へ適応し、継続的に成長できる環境を整えることを目的としています。職員が長期的なキャリアを見据え、自身の能力を高めながら安心して働けるよう、相談・指導体制の強化やキャリア面談を実施し、支援体制を充実させます。 2. 具体的な取り組み (1)メンター制度の導入 ・経験豊富な職員をメンターとして配置し、相談・指導の機会を提供 - 新入職員や未経験者が、業務の習得や職場環境に適応しやすいようサポート。 - 日常的な業務の指導に加え、不安や悩みを気軽に相談できる環境を整備。 - 指導内容を共有し、組織全体で職員の成長を支える体制を構築。 (2)キャリア面談の実施 ・人事考課のタイミングでキャリア面談を実施し、成長をサポート - 代表や管理者が職員と直接面談し、キャリアプランや働き方について相談できる機会を確保。 - 職員の希望や適性を考慮し、今後のキャリア形成に関する助言を実施。 - 長期的な視点でスキル向上や役割拡大を支援し、職員の意欲向上につなげる。 (3)研修・学習機会の提供 ・職員のスキル向上を目的とした学習機会の確保 - 介護技術や接遇に関する勉強会を定期的に開催。 - 業務上の課題を共有し、知識や技術の向上につなげる。 - 外部研修の参加支援や資格取得支援制度の整備。 3. 期待される効果 ・職場定着率の向上 - 新入職員や未経験者が早期に職場に適応でき、安心して働き続けられる環境を実現。 ・職員のスキル向上とキャリア形成の促進 - 自身の成長を実感しながら、やりがいを持って働ける環境を提供。 ・組織全体のサービス向上 |
両立支援・多様な働き方の推進 | ⑨子育てや家族等の介護等と仕事の両立を目指す者のための休業制度等の充実、事業所内託児施設の整備 ⑩職員の事情等の状況に応じた勤務シフトや短時間正規職員制度の導入、職員の希望に即した非正規職員から正規職員への転換の制度等の整備 ⑪有給休暇を取得しやすい雰囲気・意識作りのため、具体的な取得目標(例えば、1週間以上の休暇を年に●回取得、付与日数のうち●%以上を取得)を定めた上で、取得状況を定期的に確認し、身近な上司等からの積極的な声かけを行っている ⑫有給休暇の取得促進のため、情報共有や複数担当制等により、業務の属人化の解消、業務配分の偏りの解消を行っている | 1. 目的 当社は、職員一人ひとりがライフステージに応じた柔軟な働き方を選択し、仕事と家庭を両立しながら、安心して働き続けられる職場環境を整備することを目的としています。 2. 取り組み内容 (1) 仕事と家庭の両立支援
(2) 多様な働き方の推進
(3) 有給休暇の取得促進
3. 期待される効果
当社は、職員一人ひとりが安心して働き続けられる職場環境を提供し、企業の発展とともに、地域社会にも貢献できる企業を目指します。 |
腰痛を含む心身の健康管理 | ⑬業務や福利厚生制度、メンタルヘルス等の職員相談窓口の設置等相談体制の充実 ⑭短時間勤務労働者等も受診可能な健康診断・ストレスチェックや、従業員のための休憩室の設置等健康管理対策の実施 ⑮介護職員の身体の負担軽減のための介護技術の修得支援、職員に対する腰痛対策の研修、管理者に対する雇用管理改善の研修等の実施 ⑯事故・トラブルへの対応マニュアル等の作成等の体制の整備 | 1. 目的 介護職員の健康を維持し、安全かつ快適な職場環境を実現するために、健康診断の受診支援・腰痛対策・事故対応の整備を行います。職員が心身ともに健康で働ける環境を整えることで、業務の質を向上させ、利用者へのサービスの安全性を確保することを目的とします。 2. 取り組み内容 (1) 健康診断の受診支援
(2) 介護職員の身体負担軽減(腰痛対策)
(3) 事故・トラブル対応の体制整備
3. 期待される効果
当社は、職員の健康と安全を最優先に考え、快適に働ける環境を整えることで、職員の満足度向上と利用者へのより良いサービス提供を目指します。 |
生産性向上のための業務改善の取組 | ⑰厚生労働省が示している「生産性向上ガイドライン」に基づき、業務改善活動の体制構築(委員会やプロジェクトチームの立ち上げ又は外部の研修会の活用等)を行っている ⑱現場の課題の見える化(課題の抽出、課題の構造化、業務時間調査の実施等)を実施している ⑲5S活動(業務管理の手法の1つ。整理・整頓・清掃・清潔・躾の頭文字をとったもの)等の実践による職場環境の整備を行っている ⑳業務手順書の作成や、記録・報告様式の工夫等による情報共有や作業負担の軽減を行っている ㉑介護ソフト(記録、情報共有、請求業務転記が不要なもの。)、情報端末(タブレット端末、スマートフォン端末等)の導入 ㉒介護ロボット(見守り支援、移乗支援、移動支援、排泄支援、入浴支援、介護業務支援等)又はインカム等の職員間の連絡調整の迅速化に資するICT機器(ビジネスチャットツール含む)の導入 ㉓業務内容の明確化と役割分担を行い、介護職員がケアに集中できる環境を整備。特に、間接業務(食事等の準備や片付け、清掃、ベッドメイク、ゴミ捨て等)がある場合は、いわゆる介護助手等の活用や外注等で担うなど、役割の見直しやシフトの組み換え等を行う。 ㉔各種委員会の共同設置、各種指針・計画の共同策定、物品の共同購入等の事務処理部門の集約、共同で行うICTインフラの整備、人事管理システムや福利厚生システム等の共通化等、協働化を通じた職場環境の改善に向けた取組の実施 ※生産性向上体制推進加算を取得している場合には、「生産性向上(業務改善及び働く環境改善)のための取組」の要件を満たすものとする ※小規模事業者は、㉔の取組を実施していれば、「生産性向上(業務改善及び働く環境改善)のための取組」の要件を満たすものとする | 1. 目的 当事業所では、業務の効率化と職員の働きやすい環境を整備することで、生産性の向上を図ります。特に、記録業務のデジタル化や利用者満足度調査を通じて、課題の抽出と改善を継続的に行い、より良い職場環境の構築を目指します。 2. 具体的な取組 - 記録業務のデジタル化を進め、データ分析に基づいた業務の見直しを実施。 - 年に1回の利用者満足度調査を行い、課題を抽出し改善策を検討。 - 業務時間調査を実施し、業務負担の偏りを可視化。 - 業務の標準化を進め、職員が迷わず業務を行えるよう手順書を整備。 - 記録業務の簡素化を図り、効率的に情報を共有できる環境を整備。 (3)介護ソフトおよび情報端末の導入 - タブレット端末を活用し、職員間の情報共有をスムーズに。 - 記録・情報管理・請求業務が一元化できる介護ソフトを導入し、転記作業を削減。 (4)職員間の連絡調整の迅速化 - ビジネスチャットツールを活用し、リアルタイムでの情報共有を実施。 - 業務連携を強化し、業務の効率化とスムーズな対応を促進。 3. 期待される効果 - 記録業務の効率化による業務負担の軽減。 - 利用者満足度調査結果を活かしたサービス向上。 - 業務時間調査による業務の最適化と職員の負担軽減。 - 情報共有の円滑化によるチームワークの向上と迅速な対応。 |
やりがい・働きがいの醸成 | ㉕ミーティング等による職場内コミュニケーションの円滑化による個々の介護職員の気づきを踏まえた勤務環境やケア内容の改善 ㉖地域包括ケアの一員としてのモチベーション向上に資する、地域の児童・生徒や住民との交流の実施 ㉗利用者本位のケア方針など介護保険や法人の理念等を定期的に学ぶ機会の提供 ㉘ケアの好事例や、利用者やその家族からの謝意等の情報を共有する機会の提供 | 1. 目的 当事業所では、職員が働きがいを感じながら長く安心して勤務できる環境を整備することで、職員の定着率向上とサービスの質の向上を目指します。 2. 取り組み内容 (1)職場内コミュニケーションの促進 3. 期待される効果 |