「5年通ったけど、何も変わらん」その言葉の裏にある真実
2026/02/19
「5年通ったけど何も変わらんし、もう卒業します!」
ある利用者様からそう告げられました。
正直に申し上げれば、運営者として、そして一人のセラピストとして、申し訳なさと悔しさが混ざり合った複雑な感情が胸を突きました。
「そうですか……力不足ですみません。残念ですが、わかりました。また必要を感じられたら、いつでも連絡してくださいね」
そうお返事するのが精一杯でした。
しかし、その方の5年間の軌跡を記した「体力測定の結果」を改めて見返したとき、私は言葉にならない感情に包まれたのです。
数字が語る、5年間の「頑張り」の記録
ここに、その方の2つのデータがあります。
| 測定項目 | 2020年11月 | 2025年9月 | 判定 |
| 体重 | 76kg | 81kg | 5kg増 |
| 握力(右=麻痺側) | 6.5kg | 12.9kg | 大幅改善 |
| 立ち座りテスト | 10回 | 12回 | 向上 |
| 片脚立位テスト | 7.6秒 | 5.6秒 | 低下 |
| 5m歩行(通常) | 10.9秒 | 7.9秒 | 3秒短縮 |
| 5m歩行(最速) | 8.9秒 | 7.7秒 | 1.2秒短縮 |
| TUG(総合歩行能力) | 19.9秒 | 17.6秒 | 向上 |
いかがでしょうか。
5年の歳月が流れ、人は誰しも等しく歳を重ねます。本来であれば、筋力もバランス能力も自然に衰えていくのが生理的な摂理です。
ましてやこの利用者様は麻痺というハンディキャップを抱えています。さらに注目すべきは体重です。5kg増えているということは、それだけ重りを背負って動いているようなもの。それなのに、5年前の数値を概ね上回っている。
これは「変わっていない」どころか、定期的な機能訓練を継続した結果による「進化」と言っても過言ではありません。
「変わらない」と感じてしまう正体:ホメオスタシスの罠
なぜ、これほどの成果が出ているのに、ご本人は「何も変わらない」と感じてしまうのでしょうか。そこには人間が持つ「ホメオスタシス(恒常性)」という機能が関係しています。
私たちの体には、血圧や体温を一定に保とうとする機能が備わっています。これは運動能力も同じです。リハビリを始めた当初は、動かなかった場所が動くようになる「変化」に喜びを感じます。しかし、その状態が長く続くと、脳はそのレベルを「当たり前(基準値)」として上書きしてしまいます。
かつては必死で手に入れた「歩ける喜び」が、いつしか日常の景色になり、もっと動けていた頃の記憶とのギャップばかりが目に付くようになるのです。
「良くなった自分」が新しい基準になったからこそ、今の自分に満足できなくなる。
これは皮肉なことに、リハビリが成功している証拠でもあるのです。
「現状維持」という名の、最も困難で価値ある変化
あえて、私に言い訳をさせてください。
リハビリテーションの世界において、「現状を維持すること」は最大の変化であり、ひとつの到達点です。
放っておけば坂道を転げていく運動機能にブレーキをかけ、踏みとどまり、時には少しだけ押し戻す。それがどれほど過酷で、価値のあることか。
私の経験上、リハビリを自ら継続することを諦め「卒業」された方の多くが、その後に大きく機能レベルを低下させてしまう現実を何度も見てきました。病気や環境の変化でやむを得ず離れる場合は別として、「変わらないから」という理由で訓練を止めてしまうのは、あまりにも惜しいことです。
最後に、皆さんに伝えたいこと
リハビリここらdayが提供しているのは、単なる運動の場ではありません。
「10年後も、今と同じように笑って過ごせるための時間」を創ることなのです。
これは、私共だけでなく、他の多くのリハビリ施設も同じ願いを持っているはずです。
もし、あなたが「最近、リハビリをやっていても何も変わらないな」と感じているとしたら、それはあなたがこれまで積み上げてきた努力が、今のあなたの「当たり前」を支えている証拠なのです。
どうか、その歩みを止めないでください。「変わらない」という奇跡を一緒に守り続けていきましょう。私たちは、そのための伴走者であり続けたいと願っています。
ただ、一つだけ付け加えさせてください。
もし、今の環境が自分に合わないと感じるのであれば、ご自身にとってよりふさわしい場所を検討されることも、時には必要です。環境の変化は、良くも悪くも私たちの心身の機能に大きな変化をもたらすからです。
大切なのは、あなたにとって最適な環境で、歩みを継続すること。私たちはその選択も含め、皆さんの人生の質が守られることを心から願っています。
追伸〜
本日、リハビリここらdayでは「運営推進会議」が開催されました。 参加された老人会の会長(当事業所の利用者様)が、目に涙を浮かべ、声を震わせながらこう話してくださいました。
「ここらの職員さんは誰に対しても一生懸命で、本当に助けられています。痛みに苦しみ『もうあかん』と思っていた時にお世話になり、また動けるようになりました。カー○スも再開して、自分でも頑張らな!と思えるようになったんです。感謝しています」
最近、少し嫌なことが重なっていたのですが、この情熱的な言葉に私達が救われました。
ではまた氣の向く頃に。
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